旅と人生を楽しむ スマートエイジング®術 旅と人生を楽しむ スマートエイジング®術

なぜクラブツーリズムの旅は“安全”に“安心して”楽しめるのか。
元気に健やかな生活を送ることに良い影響を与えているのか。
その理由を連載コラムで皆様にお届けしていきます。

※スマート・エイジングとは、「エイジングによる経年変化に賢く対処し、個人・社会が知的に成熟すること」を指します。東北大学が2006年から提唱している少子化・超高齢社会における新しい概念で、東北大学が商標を有しています。※登録番号 第6127103号

【第12回】

「他人の役に立つ」ことは「自分の役に立つ」こと

なぜ、人生の後半期になると他人の役に立ちたくなるのか?

2018年8月に、山口県周防大島町で行方不明になった2歳児をわずか30分で見つけ出したことで話題となった尾畠春夫さん。彼は日本全国の被災地に駆けつけてボランティア活動をしており「スーパーボランティア」とも呼ばれています。

彼の収入は毎月5万5000円の国民年金のみ。決して多くない収入で、70代後半の後期高齢者の彼は、なぜ、ボランティア活動に注力するのでしょうか?

アメリカのNIH(国立衛生研究所)の一つ、国立エイジング研究所の初代所長で、心理学者のコーエンは、三千人を超える退職者インタビューから興味深い知見を得ています。

それは「あなたにとって、人生の意味や目的を感じさせるものは何ですか?」という質問に対して、あらゆる人が「他人の役に立つこと」と答える、と語っていることです。それも収入のレベル、人種、文化的背景に関係なく、あらゆる人がそう答えているとのことです。

何か恩返しをしたいという衝動は特に人生の後半期に強くなります。なぜなら、その時期には自分の死を考え、歳をとることに伴う困難に直面することで、価値観が変化するからです。

このように「社会に対して恩返ししたい」衝動は、尾畠春夫さんだけではなく、多くの退職者に存在しています。

他人から感謝されるとき、報酬系が活性化して幸福を感じる

誰かの役に立つとその人から感謝されます。「ありがとう、あなたのおかげよ」とか、「君のおかげで助かったよ、ありがとう」などと言われると誰しも嬉しいものです。

特に中高年になると、このように他人から感謝されるといっそう嬉しく感じるようです。

この理由の一つとして、私は中年期を過ぎると、他人から感謝されたり褒められたりする機会が減っていくからだと思います。職場なら中間管理職以上の立場であり、部下を褒めることはあっても、自分が褒められることはあまりありません。

一方、家庭では親が同居していない限り、男性も女性も最年長者であり、褒めてくれる人はまずいません。しかし、本来、人は誰でも、いくつになっても褒められたいものです。

理由のもう一つは、他人から感謝されたり褒められたりする行為が「心理的報酬」であり、本連載7月分で触れたように脳内の報酬系が活性化するからです。

ちなみに「心理的報酬」を受けているときの脳を機能的MRIで見ると、報酬系の中枢である「線条体」が活性化していることがわかっています。

貴方の身近にある「他人の役に立つこと」

こうした心理的報酬が軸となるボランティア機会が多くあると、高齢期にも精神的に豊かな生活を送ることができます。何よりも孤独の解消につながります。

先日まで開催された東京オリンピックでは当初予定の3万人より減ったものの、8000人のボランティアが参加したとのことです。多くの外国人アスリートから日本人ボランティアの温かいもてなしや気配りに賞賛の声が上がっています。

そのなかでクラブツーリズムにかかわる出来事がメディアで何度も取り上げられたのでご紹介します。

陸上競技男子110メートル障害で金メダルを獲得したジャマイカのハンスル・パーチメント選手の出来事です。

彼は8月4日の準決勝に出るために選手村から国立競技場行のバスに乗ったはずが、競泳会場の東京アクアティクスセンターに到着してしまいました。

「選手村に戻って、正しいバスに乗ったらウォーミングアップをする時間がない」と頭が真っ白になりました。

そこでそばにいたバス係の女性スタッフに相談を持ちかけたところ、何とタクシー代を渡してタクシーを手配してくれたのです。

彼はこのおかげで練習時間もとれ、無事決勝へと勝ち上がり、ついに金メダルを獲得しました。

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彼はこの女性スタッフにお礼を言うために、再会してTシャツをプレゼント、タクシー代も返金しました。この様子を動画に撮りSNSに投稿したところ、これがジャマイカの観光大臣の目に留まりました。

大臣は「彼女がしたことは結果がどうなるか分からない、無私無欲のことである」と感動を表現し、ジャマイカへ招待する予定だと同国紙『The Gleaner』で公表。「たとえ彼女が世界のどこにいても彼女が示した親切心にお礼をしたい」と感謝を述べています。

親切なバス係の女性スタッフとの再会の様子

この女性、近畿日本ツーリストとクラブツーリズムのロゴの入ったジャケットを着ていたのをお気づきでしたでしょうか。彼女は近畿日本ツーリストの委託業者とのことで、いわゆる「大会ボランティアスタッフ」ではありません。

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しかし、彼女のやったことは自身の判断で行った自発的行動=ボランティア(volunteer)であり、今回のテーマにぴったりの出来事でした。

ぜひ皆さんも「他人の役に立つこと」は「自分の役に立つ」ことでもあると認識して、ぜひ、積極的にボランティアにトライしてみてください。

◆ここがポイント◆

・後半生になると他人から感謝されたり褒められたりすること「心理的報酬」に幸せを感じる傾向が強くなる。これを受け取るときに、機能的MRIによる研究で脳内の報酬系の中枢である「線条体」が活性化することがわかっている。
・ボランティア活動によって心理的報酬を得る機会が多くなると、高齢期にも精神的に豊かな生活を送ることができ、孤独の解消にもつながる。

<対処法>
「他人の役立つことは、自分の役に立つことでもある」と認識し、ボランティア活動にトライしてみよう。

【前回の復習】
脳内の報酬系の仕組みについては、連載第10回をお読みください。

連載コラム

村田裕之先生

東北大学ナレッジキャスト㈱常務取締役
東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター特任教授
東北大学感染症共生システムデザイン学際研究重点拠点委員

新潟県生まれ。87年東北大学大学院工学研究科修了。
日本のシニアビジネス分野のパイオニアで常に時代の一歩先を読んだ事業に取り組む。経済産業省や内閣府委員会委員など多くの公職を歴任。高齢社会研究の第一人者として著書も多数。近著「スマート・エイジング 人生100年時代を生き抜く10の秘訣」(徳間書店)が好評。

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