
「好きなモノやコトに浸る旅をしてみたい──」
ずっとそう思っていた私が出合ったのが、クラブツーリズムの“テーマのある旅”。
実際に参加し、その世界感を体験してきました。
初回となる今回のテーマは、“タイル”。
タイルの魅力に惹かれ、全国の名タイルを見てみたいと思っていたものの、情報収集や移動の手配は、なかなか大変……。そんなとき見つけたのが、クラブツーリズムの「タイルマニアと行く 華麗なるタイルの世界」ツアーでした。
『日本全国タイル遊覧』の筆者の方が同行し、解説を聞きながら“タイル沼”にどっぷり浸る、神戸から京都を巡る2日間の旅。
そのツアーにひとりで参加してみた様子を、臨場感たっぷりにお届けします!
東京駅に集合し、丁寧な案内を受けて新幹線に乗車。チケットレスで、団体専用口からスムーズに入場できるのも、ツアーならではのうれしいポイントです。約3時間で、新神戸駅に到着!
この日の新神戸は快晴。ロータリーにはすでにバスが待機していて、座席も指定済みのためスムーズに乗車できます。添乗員さんの「おつかれさまでした!」という明るい声に、車内が一気に和やかに。

最初の訪問地は「旧ジェームス邸」(きゅうじぇーむすてい)。昭和初期に外国人実業家ジェームス氏の邸宅として建てられ、現在は結婚式場やレストランとして使われています。神戸・須磨の海を望むこの洋館は、タイル好きにはたまらない名建築です。

到着したら、まずはレストランでコースランチ。焼きたてのふわふわパンにジューシーなお肉、デザートもいただき、食後のコーヒーでほっと一息ついたら、いよいよタイル見学のスタートです。

「旧ジェームス邸」の地下のバーの床には、色とりどりの泰山(たいざん)タイルがびっしり。泰山タイルは大正から昭和にかけて京都で作られた手作りの装飾タイルで、温かみのある風合いで当時の建築家たちに人気があったのだそう。

味わいのある多彩な文様で、どこを切り取っても素敵。

らせん階段で展望台へとのぼります。景色は最高!

展望台の床にもタイルがびっしり。ここは自然光がふんだんに入るので、よりタイルの陰影がくっきり出て素敵です。

ベランダに配されているタイルも素敵。一つひとつのディテールが洋館の趣を感じさせます。
館内は英国伝統のジャコビアン様式を踏襲。タイルだけでなくステンドグラスやマントルピースなどの装飾も美しく、ドアや家具、照明などの調度品にも目を奪われました。
十分に見学したら、次の目的地へ。ツアーでは目的地間の移動は基本的に貸切バスなので、乗っているだけで連れていってもらえる安心感があります。「次はどんなタイルに出合えるんだろう?」と胸を弾ませつつバスに揺られ、車窓の景色を楽しみます。

次の「孫文記念館(そんぶんきねんかん)」は、明石海峡大橋と淡路島を望む、舞子公園にある八角三層の洋館。明石海峡大橋を眼前に見ながら目的地を目指します。

明石海峡大橋の真下をくぐって進みます。迫力がすごい!

「孫文記念館(移情閣)」に到着しました。

見学前に建物の歴史について解説を受けました。背景を知ることで、より深く楽しむことができそう!

建物は移築され、当時の姿を忠実に再現しています。ただし、内部の暖炉は本物ではなく、英国製ビクトリアンタイルを使ったレプリカが設置されているとか。

壁には、和紙に金属箔を貼った金唐紙が使われています。ゴージャス!

ふと館の窓からのぞくと、明石海峡が見渡せます。

見学を終え外に出ると、潮風が心地よく思わず深呼吸。少し日差しが強かったので、帽子やサングラスを持ってきて大正解でした!

次は、同じ舞子公園内にある「旧武藤山治邸(きゅうむとうさんじてい)」へ。実業家・武藤山治が別荘として建てた洋館です。のちに鐘紡の保養施設として使われ、現在は移築・修復されて一般公開されています。
淡い色のステンドグラスにうっとりしつつ、この日の行程はこれで終了です。
バスに乗車し、約2時間かけて奈良の「奈良ワシントンホテルプラザ」へ向かいます。バスの中では「眠りに落ちる前に」と、同行ガイドの方が資料をもとにタイルの豆知識を紹介してくれました。
観光スポットを通過すると、添乗員さんが小話交じりのアナウンスで教えてくれるのでありがたい! ライトアップされた大阪城もばっちり見えました。ホテル近くになると、買うべきお土産や近くのコンビニ情報まで教えてくれる心遣い。ドライバーさんに感謝しながら、この日は解散です。
ぐっすり眠って迎えた2日目。バスに乗り込むと、添乗員さんの「昨夜はゆっくり休めましたか?」の声でスタートです。朝から和やかな雰囲気に包まれ、気持ちよく2日目の旅が始まりました。
通過した奈良公園では、本当に鹿が道を歩いていてびっくり!右手に東大寺転害門、左手には古墳が3つ並び、添乗員さんが「古墳を巡るツアーもあるんですよ」と教えてくれました。幅広いお話のおかげで、タイル以外のものにも自然と興味が膨らみます。
ちなみに、タイルツアーは今回で6回目という人気企画だとか。ツアーグランプリ2025でも表彰され、今後は愛知や岐阜でも開催予定だそうです。


2日目の最初の目的地は「旅館 橋本の香(はしもとのかおり)」。昭和10年頃に建築された元遊郭「三枡楼(みますろう)」をリノベし、現在は宿として営業しています。
建物に入ると、玄関の上がり框の隙間に早速タイルを発見。配色が絶妙で、とってもかわいいです。


説明を受けながら館内をまわります。丸窓のステンドグラスは、まさに昭和レトロな趣。艶やかでいて控えめで、その時代の美学が盛り込まれています。
入り口上部の欄間部分にもステンドグラス。光の加減で表情が変わります。“タイル×光×空間”が織りなす昭和モダンな雰囲気に、うっとり。


実際に宿泊できる「橋本の香」。今度ぜひ泊まってみたい!
中庭には、使わないタイルが無造作に置かれていました。その一つひとつでさえも、物語を想像できて素敵。


「橋本の香」で目を引いたのは、洗濯機コーナーの壁にあるタイルです。丸っこい花の模様や格子模様……。決して派手な色使いではないけれど、それがいい。装飾がされていないガラス部分にも、繊細な模様が付いています。


タイルやステンドグラスを中心に、昔ながらの遊郭の雰囲気が味わえます。
ぎっしりと飾られている小物の一つひとつも、思わず眺めてしまいます。
さらに、隣で改装中の元遊郭の建物も、特別に見学できました。普段は見られない建物の裏側まで案内してもらえるのは、このツアーならではの魅力です。
2日目ともなるとほかの参加者さんとも自然に打ち解けはじめ、声をかけ合えるように。ひとり参加でも、ほどよい距離感で同じ景色を楽しめるのが心地よかったです。

次は「新居邸(あらいてい)」へ。京都・淀にあるこの邸宅は、タイルとステンドグラスが見どころの名建築です。大正15年に建てられた洋館付き住宅で、国の登録有形文化財にも指定されています。現在も個人宅として使われており、通常は非公開ですが、今回のツアーで特別に見学が許可されたそう。

建築についての説明を聞き、見学です。今回のツアーでは和室と洋館の2班に分かれて見学できたため、ゆったりと丁寧に案内してもらえました。
こちらは、玄関を入って左側の和室。当時別荘的な扱いとして作られたため、質素な装飾で作られているのが特徴だそうです。


応接室も雰囲気があります。
次は洋館へ。和室とはまた違う、趣を感じることができます。現在は2代目が暮らしており、100年の時を経てなお息づく日本家屋の繊細なバランスに感動します。


今回の見どころのひとつは、タイルを贅沢に使った洋館の暖炉。周囲のグリーンとワインレッドのタイルは泰山タイルで、焼きムラによる色の濃淡が味わい深い雰囲気を生んでいます。ピンクや赤のタイルとの組み合わせも見事です。


次は2階へ。色とりどりの光が室内をやさしく包む三連のステンドグラスが印象的です。窓のステンドグラスは「橋本の香」と少し似た妖艶な雰囲気で、かつて浴室に移されたものを、再びここに復元したそうです。



次のスポットは、「京都山科 ホテル山楽(きょうとやましなほてるさんらく)」。見学の前に、ビュッフェランチの時間です。ちょうど「そろそろお腹が空いたな……」と思うタイミングなのがうれしい!
食事を楽しみながら、ほかの参加者さんとタイルの名所の情報交換をして、同じ“好き”を共有できる楽しいひと時。
「京都山科 ホテル山楽」では、ロビーの天井一面に広がる大正ロマン漂うステンドグラスがお出迎え。これまで見てきたレトロでどこか懐かしい雰囲気のものとはまた違う、洗練された雰囲気です。
菖蒲や鶴など、日本を感じるステンドグラスを見ることができます。参加者同士で写真を撮り合ったり、添乗員さんが撮影を手伝ってくれたりと、和やかな雰囲気。


次に訪れたのは、こちらも登録有形文化財に指定されている「船岡温泉(ふなおかおんせん)」。特別に、営業前に貸切見学ができるとのこと!

入り口をくぐると、早速タイルがお出迎え。お風呂屋のイメージとは少し違う、グリーンとピンクのバラをモチーフにした、少しゴージャスなタイルに見惚れてしまいます。


脱衣所の格天井の中央には、天狗と牛若丸をモチーフにした木彫り彫刻がはめ込まれています。立体感がすごい!
どこを見てもとにかく立派で、あちこち見回してしまいます。時計も当時のもので、時は止まったまま。欄間の彫刻もお見事です。

つい立派な天井を見上げてしまいますが、さりげなくかわいいタイルがたくさん散りばめられていました。

池の端にもタイルがちらり。
とにかくかわいいタイルがずらり。これは大正から昭和にかけて流行した「マジョリカタイル」というもので、表面の凹凸が特徴です。どのタイルも色彩豊かで、思わず見入ってしまう細やかさ。
「船岡温泉」を後にし、バス移動中はカメラロールを見返しながら思い出を整理。どの写真も映えすぎていて、お気に入りを決めるのに迷ってしまいます。



次の訪問地は「タイルギャラリー京都」。ここでは、タイルの作り方や製造の歴史について詳しく教えてもらいました。
建材として使う、さまざまなタイルが展示されています。
これまで見てきた歴史的タイルとはまた異なった、現代の垢抜け感たっぷりのタイルを見ることができて、また違う刺激をもらいます。


タイルの近くにはQRコードがあり、詳しい説明を見ることができます。
塗料や顔料などの展示も。普段はなかなか触れない貴重な“泰山タイル”を実際に手に取ることもできました。


あっという間に、残すところあと1スポットとなりました。次に向かう京都駅構内の「ポルタプラザ」までは、徒歩すぐ。京都タワーが見え、ちょっとした観光気分も味わえます。
京都駅直結の地下街「ポルタプラザ」には、ポルトガルの工房で制作されたアズレージョ(ポルトガル語で「タイル」の意味)が、柱や壁、ベンチを彩ります。

8本の柱に使われている約9000枚ものタイルは、タイルアーティスト・石井春さんによるもの。藍染のような濃淡や透明感があり、日本では出せないポルトガル特有の赤や青が印象的です。花や魚など、かわいらしいモチーフもたくさん。

近くにあるベンチのタイルは違う趣で、また素敵です。

メッセージやサインが書かれている場所を探すのも楽しい。青いアズレージョの世界にどっぷりと浸り、盛りだくさんの全行程が終了しました。
バスを降りて荷物を持った瞬間、「ああ、荷物を預けて観光できるって本当に楽だったんだな」と実感しました。
新幹線に乗るまでのフリータイムは、約1時間20分。おみやげを探す時間もたっぷり。ほかの参加者さんとお土産話に花を咲かせつつ、帰路へ……。
普段は立ち入れない邸宅や温泉、何気なく通り過ぎていた駅ナカの一角まで──。「タイル」だけを求めて巡った2日間は、想像以上に濃い時間で、旅から戻った今も、素敵なタイルでいっぱいのカメラロールを眺めながら、余韻に浸っています。
タイルの名所だけでなく、バス移動中に添乗員さんが観光名所を解説してくれたことで土地への理解が深まり、「また来たい」という気持ちがさらにふくらみました。
そして私のようにひとり参加の方も多く、現地では自然と会話が生まれたのも楽しかったポイント。同じ“好き”を通じてつながれるのも、クラブツーリズムの“テーマ重視旅”の魅力だと思います。
さて、次はどんなテーマの旅に参加しようかな──。また新たな“好き”に出合えたら、その魅力をたっぷりとお届けします。どうぞ、お楽しみに!
※本記事で紹介している体験・見学内容は、取材時点の状況にもとづくものです。施設の公開範囲や営業時間、料金、ツアー内容は変更となる場合がありますので、最新情報は各施設・公式サイト等をご確認ください。掲載写真は許可を得て撮影したもの、またはイメージ画像です。












