知らない街のスーパーに足を踏み入れた瞬間、見たこともないパッケージや、独特なネーミングの惣菜に目を奪われたことはありませんか?地元の人が当たり前に手に取る地元商品には、その土地の歴史や文化がぎゅっと凝縮されています。スーパーマーケットは、単なるお買い物の場ではなく、五感で楽しむ「食べる博物館」。
本記事では、全国のローカルスーパーを巡り、隠れた地元食の魅力を掘り起こす、スーパーマーケット研究家の私が、思わずパッケージに惹かれて買ってしまった「パケ買い」商品や、アイコン力とストーリーを持つご当地グルメを厳選してご紹介します。
商品の「顔」であるパッケージの裏側に隠された、驚きの美味と地域の物語を巡るディープな旅へ、ようこそ。
北海道から沖縄まで、旅先で見つけた8つのご当地グルメをめぐります。
【北海道】徳川の誇りを纏った、黄金の進化系ソース
鮮やかなオレンジ色が目を引く、スタイリッシュなボトル。一見、海外の高級ドレッシングのようにも見えるモダンな佇まいですが、ラベル下部には葵の御紋と、尾張徳川家から授かった歴史ある「㊇(マルハチ)」の印が刻まれ、老舗の品格を漂わせています。
「北海道産 うにソース」服部醸造 (100g瓶/¥1,080)
1927年創業の服部醸造は、明治維新後に藩主とともに北海道・八雲に入植した尾張藩士をルーツに持ちます。当時の当主から徳川家ゆかりの「㊇」の商標を伝承された名門です。このソースは、伝統の昆布醤油をベースに、味に影響しない規格外の北海道産雲丹と奥尻ワインを贅沢にブレンド。
「土地の恵みを無駄にせず、最高の一品へ」という開拓者精神が生んだ逸品です。「令和5年度北海道新技術・新製品開発賞 食品部門優秀賞」など多くの賞を受賞。今年は第70回函館圏優良土産品推奨会合格品に選ばれました。
おすすめの楽しみ方
まずは熱々のご飯にのせたり、卵かけご飯(TKG)にひと回ししたりと、濃厚な「うに感」をダイレクトに味わって。また生クリームと合わせてパスタソースにすれば、贅沢な大人の味わいに変わります。
ここで見つけました!
服部醸造本社と札幌支店の直売所、同社オンラインショップ、および「きたキッチン」オーロラタウン店・旭川店、など道内こだわりの小売店で取り扱いあり。
【福島県】カップの中で舞い上がる、雅なあられ
筒状の和紙に包まれた、凛とした気品漂う佇まい。「ゆず」と「ぶどう」と書かれた、優しい色使いの和紙は、手に取るだけで老舗の品格を感じさせ、お土産としても喜ばれる「パケ買い」必至の美しさです。
「ここのえ」九重本舗奈良屋 (各150g/¥993)
芯となる小さくて香ばしいあられに、伝統的な方法で砂糖をコーティングした、優しい甘みのお菓子です。九重本舗奈良屋の「ここのえ」は、平安時代の歌人・伊勢大輔が詠んだ、奈良の都と九重(京の宮中)を対比させた和歌に由来。古都・奈良と福島を繋ぐ、雅な雰囲気を感じます。
おすすめの楽しみ方
そのままポリポリと食べてもいいのですが、カップに粒を入れ、静かにお湯を注いでみてください。香ばしいあられが水面に1粒ずつ踊るように浮かび上がる様子は、まさに「カップの中の芸術品」。
ここで見つけました!
九重本舗奈良屋店舗および「ヨークベニマル喜多方店」など県内一部スーパーで取り扱いあり。
【長野県】焼肉の聖地が生んだ「○○ジン」文化
羊、豚、鶏をモチーフにした、ポップでレトロなイラストに心をわしづかみされます。冷凍コーナーにずらりと並ぶ姿に、思わず全種類制覇の大人買い。(写真真ん中の定番「遠山ジンギス」の羊のイラスト。よく見ると脚が「JINGISU」の文字!)
「遠山ジンギスこだわり銀印(真ん中)、とりじん、ぶたじん」肉の鈴木屋
(220g/¥890|320g/¥690|250g/¥740)
長野県南部飯田市は焼肉店が多いことで知られる町です。かつて緬羊の飼育が盛んだった地域で、戦後、その羊肉を食べるようになった歴史がありました。なかでも、飯田市民の冷凍庫に常備されているのが、地域の精肉店・肉の鈴木屋が開発したにんにくのパンチがきいた「遠山ジンギス」。
羊だけでなく「豚肉や鶏肉も」との要望も出て、いつしか遠山郷では味付け肉を「ぶたじん」「とりじん」と、「ジン」をつけて呼ぶようになりました。ジビエも含め多種多様な「ジン」を選ぶことができますが、地域のスーパーでは「遠山ジンギス(羊)」「ぶたじん」「とりじん」の3種が定番となっています。
おすすめの楽しみ方
味付け羊肉の「遠山ジンギス」は、キャベツや季節の野菜と一緒に焼きながら食べるのが地元流。マトンモモ肉使用の「こだわり銀印」は地域で一番人気ですが、初心者は柔らかく香りもマイルドな「プレミアムラムジン金印」がおすすめ。
「とりじん」は焼くだけでなく、片栗粉をつけて揚げれば唐揚げに。また「ぶたじん」は野菜と炒めるほか、カレーや酢豚の肉としても便利に使えます。
ここで見つけました!
肉の鈴木屋店舗とオンラインショップ、および「キラヤ」など飯田市周辺主要スーパーの一部で取り扱いあり。
【山梨県】食のテーマパークが醸す、良き友という名のワイン
毎年変わるラベルのイラストが、いつも楽しみというファンの多いワイン。スーパーのオリジナルという枠を超えた、温もりと高いデザイン性を兼ね備えた一本で、自分へのご褒美ギフトにもぴったりです。
「ベルエキップ甲州」ひまわり市場 (750ml/¥2,200)
山梨で大人気のご当地スーパー「ひまわり市場」には、オリジナルワインがあります。
フランス語で「良き友」との名をもつワイン「BELLE EQUIPE(ベル・エキップ)」。甲府市の老舗ワイナリー「サドヤ」が醸造する、八ヶ岳南麓(なんろく)のご当地スーパー「ひまわり市場」のオリジナルワイン。そしてこのたび、「ベルエキップ甲州 白 2025」は、国際ワインコンクール「フェミナリーズ世界ワインコンクール2026」にて、金賞受賞しています。
おすすめの楽しみ方
スッキリとした酸味は和食との相性が抜群。お刺身や地元の惣菜、地域のチーズと一緒に。ラベルを眺めながら、旅の思い出を語らう時間にぴったりの一本です。
ここで見つけました!
ひまわり市場で取り扱いあり。
※写真は「ベルエキップ甲州2023」のもので、ラベルの西暦はぶどうの収穫年となります。
【石川県】能登のイカと金沢カレーが合体!新感覚のいかめし体験
パッケージからインパクト抜群の商品の中身は、黒く輝くイカ。濃厚な金沢カレーと、石川県民の大好きなスルメイカが一つになった、見た目も味も個性派な一品です。
「金沢カレーいかまんま」錢福屋(甘口・辛口/各¥1,296)
ふたつの金沢名物がひとつに。きっかけは、水産加工会社・錢福屋の西竹康生社長が、子どもの残したカレーライスを詰めて、面白半分にイカめしを炊いたことでした。思った以上のおいしさに驚いた社長が、地元の老舗洋食店「キッチン・ユキ」の金沢ブラックカレー、能登産スルメイカ(※不漁時は他県産に変更)、加賀産コシヒカリを使用し、商品化。今では、手軽に海の幸とソウルフードを味わえる「進化系いかめし」として、大人から子どもまで幅広く愛されています。
おすすめの楽しみ方
袋ごと湯煎後、輪切りにしてどうぞ。一手間加えて、輪切りのイカまんまをフライパンで両面に焼き目をつけ、とろけるチーズをのせれば最高のおつまみが完成します。
ここで見つけました!
錢福屋店舗とオンラインショップ、および「Aガイヤ」など県内スーパーや道の駅の一部で取り扱いあり。
【兵庫県】長崎じゃない、これぞ西のスタンダード
鮮やかな黄色のパッケージにピンクの文字と、圧倒的なアイコン力を持つ関西きっての袋麺。左上、初代キャラの「とびっこ」は地元・兵庫県たつの市ゆかりの童謡「赤とんぼ」にちなみます。
「チャンポンめん」イトメン(1食/¥135|5食入/¥567)
主に関西・北陸で年間2千万食が消費されている、関西定番の即席麺のひとつがイトメンの「チャンポンめん」。1963(昭和38)年からのロングセラー品は、西日本を中心に現在では全国へファンの裾野を広げています。その特徴は、あっさりとした塩ベースのスープと独特な「小エビとしいたけ」のかやく。「チャンポンめん」の商品名、関西人はまったく長崎ちゃんぽんと混同しないそうで、関西で「今日、チャンポンね」と言われたときは、大体こちらかもしれません。
おすすめの楽しみ方
無塩製麺された麺のピュアな味わいを楽しむため、まずはシンプルに。付属のかやくがもたらす磯の香りと旨味は、一度食べると忘れられない懐かしさがあります。
ここで見つけました!
イトメンオンラインストアおよび、近畿エリアの主要スーパーで取り扱いあり。
【山口県】給食の名作が「おかずスナック」に?!
給食当番や調理員さんを思わせる、どこか懐かしいキャラクターと「おかずスナック」というキャッチコピーが好奇心をそそります。お菓子コーナーにあっても、惣菜コーナーにあっても目を引くユニークな存在感です。
「チキンチキンごぼうFD」63Dnet ながとラボ(¥600)
1995年頃から山口県の学校給食で広まり、圧倒的人気を誇る給食メニュー「チキンチキンごぼう」。鶏の唐揚げと素揚げごぼうを甘辛く和えたおかずを、なんとこの商品ではフリーズドライで再現。さらにお湯を入れて「ほぼ復元」の備蓄食にもなる2wayの食べ方ができます。山口県では大人になった今も、「子どものころに親しんだ給食をつまみに一杯」という楽しみ方をする人もいるそうです。もちろん、思い出がなくても美味しくいただけます。
おすすめの楽しみ方
そのままサクサクのスナックとして楽しむのはもちろん、お湯で戻せば本格的な「惣菜」に大変身!お弁当の隙間を埋める一品や、キャンプでの手軽なおかずとしても、驚きの美味しさを発揮します。
ここで見つけました!
防府市のスーパー「ユアーズ・バリュー 仁井令店」のほか、長門市を中心とした県内スーパーや土産店、道の駅などで取り扱いあり。
【沖縄県】飲む「ういろう」!?石垣島を支えるエナジー飲料
ピンクのキャップにレトロな瓶。南国の強い日差しの中で見つけるこの姿は、たまらなく愛らしく、つい写真に収めたくなる「美らデザイン」です。
「玄米乳」「飲む玄米」八徳屋(¥250/¥280 島内価格)
古くから沖縄の家庭で愛飲されてきた、玄米からつくるソウルドリンクは、栄養価が高く、夏バテ防止や健康飲料として知られています。そんな地元の味を伝えるのは八徳屋の「玄米乳」。島の玄米、黒糖を毎日じっくり煮詰めて作られています。瓶を振ってもなかなか落ちてこないほどの濃厚さは、まさに島のエネルギーの結晶。常温タイプの「飲む玄米」は、お土産に便利なことから、観光客に人気です。
おすすめの楽しみ方
黒糖風味とそのとろりとした口当たりは「飲むういろう」。冷やして飲むのが定番です。島のゆっくりとした時間を感じながら味わってみてください。心にもエネルギーがチャージされてくるような感覚になるかもしれません。
ここで見つけました!
「かねひで石垣市場」など、一部の石垣島内のスーパー・食料品店・コンビニで取り扱いあり。
※玄米乳(左)は要冷蔵品で島内販売のみ
パッケージが誘う魅惑のご当地物語の世界
ご当地スーパーで出会う、ローカル食の世界はいかがでしたか?
私がこれまで全国のスーパーを歩いて感じてきたのは、棚に並ぶ一つひとつの商品が、その土地の「誇り」であるということです。パッケージのデザインという「現代の服」を着ていても、中身には地域の風土や歴史が息づいています。
「パケ買い」して、食べて、驚く。その体験こそが、どの観光名所よりもディープにその土地を知る「旅」になります。次に知らない街を訪れたときは、ぜひ地元のスーパーに立ち寄ってください。どの博物館よりも身近で、どの美術館よりも暮らしの美を備えた「日本の宝物」が、あなたを待っています。
※価格(すべて税込参考価格)は取材時2026年4月時点のもので、商品仕様、販売店、価格は予告なく変更することがあります。
教えてくれた人
2012年よりスーパーマーケット研究家として活動。「あさイチ」「マツコのない世界」などTV出演、新聞連載、著書『日本ご当地スーパー大全』等でローカル食の魅力を発信。「全国ご当地スーパー協会」主催。